エーゲ海海戦・最終回2

泣いても笑っても今日が最後のエーゲ海・海戦。

興奮して浅い短い睡眠のあと、夜明け前のフラットに立つ。

昨日だめだった理由はよくわからない。理由の一つには気温が低い朝方は魚の活性が低いということかも知れない。

ハワイのボーンフィッシュも、明け方すぐには活性は高くなく、大抵、日が昇ると活性が上がってきた記憶がある。

トルコ南西のフェティエではこの時期日中は26,7度になるけれども、明け方は15度。もう秋で、水深の浅い場所は海流などと違い、水温は外気温や日射の影響を受ける。

日が昇ると太陽光は強く、浅瀬の水温は気温より早く上がるので、夜明け後しばらくで少し温まりスイッチが入り始めるのは説明がつく。

ポイントにつくと、回遊魚狙いの地元ルアーマンたちが数人立ち込んでいる。彼らはヒザ下まで立ち込むが、動き回ることはしない。ルアーで十分に回遊コースまで届くから。

フライマンは射程距離がルアーの半分ほどしかないので、フラットの縁のブレイク手前に立ち込んで彼らを遠巻きにみて回遊コースと思われる延長線上にフライを通していく。水深は太ももの真ん中あたり。

最後の最後は、引っ張りときめ、フローティングラインが6番のロッドに乗っている。

今朝もブルーフィッシュ、ヨーロッパシーバスは回ってこなかった。地元ルアーマンたちは、朝ちょっとだけ竿を出してその後仕事に行くのだろう長居をせず小一時間で去っていく。

残り時間は1時間弱。

ブルーフィッシュとヨーロッパスズキは諦めて、ヘダイの実績のある膝上からヒザ下くらいのフラットに移動。

すると、多分前釣行時に目撃したと思われる初老のルアーマンがフラット深くに立ち込んできた。これはきっとcupra、ヘダイ狙いの同業者だ。

手練のルアーマン、ヘダイポイント入り後にパタパタと手のひらヘダイを釣っている。

近づいて話しかけた。

lufer、leverk(ブルーフィシュやヨーロッパスズキ)はここまで来ますか?

来ないよ。

なるほど。

回遊狙いの引っ張りモードにやっと踏ん切りがつけられた。

残り30分。

タイプ3のシンキングの乗ったリールに付け替える。先月立ち込んでいるときにリールを変えたときには、ロッドにフライラインを通すときにリールを水没させたのだけれども、考えてみると、オービスのラインバスケット、水に浮く。

ラインバスケットに竿尻を置いて水に浮かせたまま、フライラインをロッドの先まで通せた。この方法は使える。リールを水没させずに済んだ。

初老のガンマン、こっちの方向に投げるといいぞと教えてくれる。

キビレで通った多摩川河口の釣りは何が気持ち良いかって、フライで底を取る釣りができること。

一般的フライフィッシングは、多分に表層勝負、沈めてもまぁ、普通は底を取ることは稀。でもキビレを釣り始めて、ボトムを取ることを覚えた。

底からくる情報がフライラインや、フライからもたらされるものはこれまでの毛鉤釣りの世界観をガラッと変えてくれた。

その次にカマスの釣りでタナを取る釣りを覚えてストップウォッチを使うようになった。

キビレをフローティングラインで釣っている方もおられるようだけれども、僕は沈めてやるほうが格段に楽しいと思っている。

キビレやヘダイは、底を取っていると釣れやすい気がする。底が砂泥の場合魚がフライを咥える瞬間、底にフライを押し付ける感じがするから。

引っ張りで魚がフライの後ろからフライをひったくるのと、ボトムに押し付けて咥えるのはイメージが違う。後者は、木槌でゴンゴンと叩く感じ。

膝下の水深でフローティングラインでも底は取れる。けれども、フライの動きが変わるし捕食の動きも変わると思っている。

おっさんの教えてくれた方向でしばらくやってみてだめだったけれども、このフラットがおもったよりずっと広いということがわかった。

で、やっとこさミニチュプラ(正確にはlidaki、小型のヘダイの出世魚名称)の時合がきて、手のひら大ヘダイを3つ。

今朝はブルーフィッシュの稲妻のような光景もシーバスのボイルも殆ど見られないけれど、なんの魚か判別できないテーリングを複数回みた。ヒレが丸くて、黒い。

全く見当がつかないのだけど、射程圏外なので投げては見ても届かなくて手も足も出なかった。

時間切れ間近、黒い丸ヒレテーリングが射程圏内で起こった。20メートル強。水深は恐らく股間くらいなので80cm前後。

届く距離だ!

慎重にキャスト。

テーリングの真上を避けて1m位外したテーリングの先に着水。

細切れストリップ2つ目でかかった。

で、ファイトしていてもなんの魚か全く見当つかない。

上がってきてのけぞり笑った。

マハタだった。

現地ではlahozと呼ばれていて、ラテン語名はEpinephelus aeneus、英語名を調べるとwhite grouperとあるけれど、見た目はマハタ。エーゲ海、地中海でよく食べられている。

ハタのテーリング撃ち。まるで再現性のないゲームをやった。でも、このテーリング複数回みたので、将来、これはハタのテーリングだと言えるかも。というまるで役に立たない経験値が増えた。写真を後で見ると、背びれの後ろや尾びれは丸みを帯びて黒い。確かにこのヒレのテーリングだった。

そして時間切れ。

釣った魚のこちらでの名前を知りたかったので陸で釣りをしている3,4人の釣り人に話しかけたら、皆ロシア人だった。それも、避難してきている人たちという印象はなく、なんと、全員トルコ語で魚の名前を知っていた。lagoz=マハタを知っていた。fethiyeに根ざしているロシア人もいるのだ。ロシア人釣りコミュニティーがありそうな印象。

釣り道具を畳んでいるので、もう釣り終わったのか聞くと、「うん、なにも釣れなかったので、今からカニをとるとこだ」と。そうそう、ロシア人はカニを食べる。昨日引っ掛けたワタリガニ談義で盛り上がった、「一匹日本で売ると15-20ドルするんだよね。こっちでカニを食べさせるレストランやったら儲かるねぇ」と談笑。

目的のブルーフィシュとはお目にかかれなかったけれども、想像の斜め上からマハタが降ってきた。ズッコケ笑って試合終了。

通えばいつかきっとブルーフィッシュ釣れると思う。

でも、次いつ来られるかはわからないし、次がないかもしれない。

笑いが取れたから良しとしよう。

おしまい。

RX100M5A, Photomatix Pro, Topaz Studio

HDR from 3 images, hand held

コメントを残す