ついに来た。
長い一日だった。
複数釣り場を漂流した挙げ句、踏み込んだ初見のポイント。
数投目。
海面に突き刺さったステンレスはしごの脇を落としていると、
ズドン!
ギギギギギー。ギシギシギシギシー。
ラインが梯子に入っていく。フライでボーンフィッシュかけた時のような抗えないトルクで梯子の中にラインが入っていく。
ドラグの音でなく、ランニングラインがハシゴの足に引っかかりそこから来るギギギギギ音。
初めてしっかり魚にかけた瞬間に万事休すだ。
なんと真実とは酷いものか。
スプールの逆回転は止められない、ハシゴの足に擦れてギーギー音を立てながらラインは出ていく。フライリールはヘチリールと違って、ドラグが効くのでリールファイトができる。
この一匹掛かる以前、ドラグの壊れたフライリールを使っていた。ヘチリールと同じくドラグフリーの状態でかかった瞬間に魚を止めなければならず要領を得ていないために直近3回ラインブレイクして悔しい思いをしていたのだ。
当初止めるのが精一杯だったが、しばらくしてやっと落ち着く。魚が走りはしなくなった。
でも梯子の脚に巻いている上に、その先で魚が綱引きしているので、ラインは止められはするもののギリギリ音を立て、ラインの回収ができない。
かろうじてフライロッド立てた分を回収するも、また、魚が走りラインが出ていく、、、
こればかりは人に助けを求めてもどうにもならない
焦りまくっているところ、ちょっと前に声をかけてきたおそらく船員の陽気なお兄さんが戻ってきた。
「魚かかったんだけれど、ハシゴの足に巻いて、、、、」
とどうにもならないことを他人に言ってみてると、
表層で魚が反転してしぶきを上げた音が聞こえた。
ん?表層で魚がしぶき?え?
こちらは竿先に集中していてテンションが切れないようにだけを考えているので魚は見えなかった。
「あんちゃん、魚だったよ。お兄さんの魚だと思うよ、、、」
ん?ラインまだ梯子にのみ引っ張られているんだけれども。
後でわかったのだけれども、ハシゴの一番下の部分の足で開放構造になっているとこにラインが引っ掛かり、魚はそれに抗い水面を目指したようだ。
なんとかして魚の走りは止まった。これまで何分ひん曲がった竿を抑えているんだろう。途方もう無い時間が過ぎた感覚があるけれど、ものの数分なんだろう。
ラインのテンションは続く。ただ、絶望しかしていなかった。
というのは、ハシゴの間をぬって魚が走ったと思っていたので、その間を逆行させて持ってこない限りこの絡みは解消できない。
とにかく、ラインを回収。ラインを回収、ラインを回収。
匍匐前進より遅いが少しずつラインをフライリールに収めていると。
魚が潜った、ああああ、万事休す。
あ? あ?
引っ掛かりが解消されている?!
魚が浮いた?
そこでやっと理解できた。ハシゴの一番下の部分の開放部分にランニングラインが引っかかった状態で、ファイトをしていたのだ。
ラインにテンションがかかったままなので、L字かV字になっていたラインはハシゴの引っ掛かりを解消しようがなかったのだ。
魚が下に潜ったので、ラインのテンションを保ったままフライロッドの先と魚が直線上に初めて乗っかった。
流石に数分人間と綱引きした魚だ。
難なくいなせてランディングネットへ、、、だ。
と思ったけれど、今度ランディングネットが開かない。ネットの棒とネットの間のジョイントのラチェットがうまくリリースできない。埒が明かないのでネットを折りたたんだまま取り込みした。ハラハラはまだ終わらないのだ。
なんとか逆Uの字のネットの隙間に魚を滑り込ませる。
やった。捕れた!

叉長38センチ。
ヘチ釣り参入から今日でちょうど2週間。18回目の釣行でやっと顔が見られた。
直近ラインブレイク3回はハラハラした。
初めてかかった獲物バラしたときは5分くらい震えた。
今日のは、かかった瞬間に絶望しかなかったので、ドキドキも、ハラハラも、震えもなく、え?捕れたの?と、とれたの?
マジ?
って驚きしかなかった。
実はポイントに付いたときに先行の玄人のオーラ出している人が、「魚居るよ。でも口使わないよね」の一言があったから集中力保てた。
その方がこちらに戻ってこられたので、感謝の意を伝えると、同じタイミングでパタパタと2枚捕れたよー。と
こちらはもう試合続行する気はほとんど無い。ヘチ釣り参戦して2週間朝な夕なに出撃続けてやっと一匹。
喜びと感動があとから沸々と湧いてくる。
フラットでキビレをやっているときは魚がかかると竿と鈍角でフライラインがあって、フライライン、フライロッド、ラインの受ける水それぞれの抵抗と魚は受ける。ヘチ釣りの場合、ラインの抵抗全くなくロッドに直に来るからこんな劇的なのだ。その上、ドラグがないからリールで止めて初動を制するのはフライタックル使っているより難しいと思う。
えらい世界に足を踏み込んだということに改めて気づく。
帰り道のビールの美味いこと。
やっと釣れた。
おしまい。