前回のエーゲ海遠征からちょうどひと月。
同じ月周り、潮回りで、満月の日に再びフェティエのフラットに立つことができた。
子供を妻の実家に預けて妻と片道700キロの弾丸二泊旅程。妻の実家からFethiyeまで13時間の長距離ドライブ。
今日は、実は二日目。初日は、コツコツとショートバイトが二回あったのみで坊主。
初日の前日夜、冷たい豪雨が降って気温がガクンと下がり、海水温もしかりで、魚っけなしの、味気ない敗退だった。
二日目。前日雨もなく、気温がやや安定したので、期待が膨らむ。
妻の実家はブルサという都市なのだが、このフェティエ釣行は南へ700キロの旅。日本に住んでいると南に陸路で700キロってあり得ない。青森から東京まででも600数十キロ。南下しながら気温が徐々に上がっていくのがおもしろい。出発時気温が14度が到着時27度になった。
トルコ南部の地中海に面したアンタルヤというリゾート地はいま、ロシア人が溢れかえっている。ホテルや長期滞在型の宿泊施設は一杯で予約が取れないらしい。アンタルヤは以前からロシア人には人気で、トルコ人も休暇では人気の場所だ。過去何度か行ったことがあるのだが、街を歩いているとロシア人用のホテルやら、土産物や、キリル文字が目に入る。
絵面は違うけど、沖縄で昔のコザの街みたいな感じにトルコ人には見えるのかもしれない。
ヨーロッパで起こっているエネルギー危機とトルコの通貨安でトルコにはロシアはもちろんのこと、ヨーロッパ人がわんさか入ってきている。
戦争に起因する政治的なエネルギー危機で、今年の冬ヨーロッパは大変な事になりつつある。それに備え、ヨーロッパ中から通貨の安いトルコに人が流れ込んできている。トルコは、ヨーロッパからみると、近い、安い、温かい、最も気軽な生活防衛ヘッジ拠点になっている。聞くところによるとロシア人200万、ドイツ人200万人が流れ込んでいていると。
そういう文脈でトルコ南部に滞在出来ないロシア人たちがエーゲ海方面にも溢れてきているようで、泊まった滞在型ホテルにもロシア人が結構目についた。
避難してきているであろう子供達はプールで泳げるので無邪気にはしゃいでいる。一方、親の心中はいかなるものか。滞在型ホテルの管理人曰く、大抵のロシア人は2,3泊して更に安いところを探して動いているということのよう。泊まったところは先月ハイシーズンだったので一泊100ユーロだったのが、今月はシーズン外なので50ユーロになっている。
トルコに持ち込める現金に制限は無いそうだが、swiftのネットワークからロシアの銀行は西側諸国の制裁で除外されている。ロシアの決済システムMIRもトルコでしばらく使えた。送金でなくても、ロシアのクレジットカードがしばらく使えていたのだが、この夏でトルコの大手銀行、準大手銀行で導入していたが使用を見合わせることになったので、ロシア人が資金を持ち込むには、それ以外の方法を使うしかない。となると、暗号資産か、地下だろう。
トルコにはすでにかなりのオリガルヒが来ているらしいので、新しい根っこが生えて新しいネットワーク築かれていると思われる。
数日前香港ににオリガルヒのスーパーヨットが停泊していることに米国が文句を言ったというニュースを見た。
トルコの軍隊はNATOに属している。ただ完全西側というわけでは全くなく、プーチンとも付かず離れずでエネルギーを確保しつつ、外交を行っている。直近の露土首脳会談でもトルコを通して、ヨーロッパに天然ガスを供給することが議題に上がっていた。両者の利害が一致する。
お金を落としてくれる外国人がトルコにやってくることは通貨が崩落している文脈で大歓迎。40万米ドル以上の不動産投資、若しくは50万米ドルの資本投下をすれば市民権がもらえる。
額が妥当かどうかは置いておいて、必要な人は反射食いだろう。
ちなみに、日本人は市民権くれると言っても、二重国籍はゆるされないので、日本国籍捨ててまで市民権が欲しい人はほぼ居ない。賃貸でも長期滞在ビザは手続きは大変だけれどもでるので、ヨーロッパ人と同じような手続きは必要ない。一定額以上のアパート一つ買えば長期滞在ビザは出る。もちろん40万ドル以下。
必要だったら、スコットロッドとtiborのリールと引き換えに指南します(爆)。
さて、エーゲフラット。
立ち込み時、トルコ南西部とはいえ昨日、日の出前は14度、今朝は17度、秋の釣りは先月日本を出るときに準備してこなかった。長袖インナーを重ねてその上からウィンドブレーカーを羽織る。ウェーダーはこちらで調達した。ウェットウェーディングすると、凍えるのは確実だし、濡れて上陸したあとは歩くのも困難だろう。釣っている間に日が上がり気温も20度前後になるとは言え、濡れるのは勘弁だ。
ひと月前の3日釣行では奇跡的に毎日魚の顔を拝めた。今回は、あっさり1日目坊主をくらい、最終日の朝だ。
入水ポイントに着き、ランディングネットを忘れたことに気づいた。釣る気満々なので、駐車場へ引き返すも、日の出には間に合った。20分のロス。
1時間半から2時間の釣りをするためだけにわざわざ来たので20分でも痛い。ただ、手のひら2つ、つまり40センチ以上がまかり間違って釣れてしまったとき為すすべが無いので、ネット無しはありえなかった。有無を言わず踵を返す。
陽気な駐車場用心棒が、何を忘れた?とにこにこしながら話しかけてくる。見られてるんだなぁ。これを忘れたんだと、折りたたみネットを指差すと笑顔が帰ってきた。
アウェイでは場所が特定出来ただけでは、釣果につなげるまで、潮回り、ベイトの有無、気温、地形、などなど、様々な条件をクリアしないと魚の顔を拝めない。
実際過去に数度、子供が生まれる前、ボドルムというところでブルーフィッシュを狙ったが当時は、立ち込む装備や経験値を持っていなかったので、手も足も出ないどころか釣りにならなかった。一度だけ遠投できるルアーマンが目の前でブルーフィッシュを釣り上げそれに興奮したのが唯一の遭遇目撃経験。
そういう点で前回ヘダイ達の顔を拝めたのはラッキーだった。
ただ、釣果の再現性はなし、たまたま釣れただけなので、足を使って地形を把握し、頭の中の地図をひろげていくことや、観察から考察を深めていくしかない。
陸上でポイントに歩く途中の夜明け前の暗がりで、初老の男性がルアーを投げているそばに、魚が転がっている。ドン・キホーテはまの活性が瞬時に上がる。
こ、これ、ヨーロッパスズキですか!?
そうだよ、いまチャンスだよ、と返答がくる。
期待できる!
昨日河口で釣りをしている人や、より内湾の浅瀬で立ち込んでいる釣り人がいたので、そこら辺を攻めることにする。もちろん、初挑戦ポイントになる。
衛星写真でみると、こんなところ。

河口の流れ込みは、ふわふわで、多摩川河口を彷彿とさせる。
フラットの底は大きく分けて、硬い砂地、やや柔らかい砂地、ふわっとした砂泥、ふわふわズブズブ。
河口の川筋に向かうに釣れ、ふわふわズブズブになってくる。
多摩川河口でも、ふわずぶは結構ある。
キビレ狙いで多摩川河口に通ったこの夏、シャコ、シジミ、ハマグリ、餌用のカニ、などを取っている人によく話しかけた。中にはシャコを分けてくれた方がいて、帰りのバス、濡れた出で立ちでラインバスケットにシャコを入れて持ち帰ったこともある。情報やらお土産やらの楽しい経験値は宝。
まとめると、ふわふわところにハマグリは多い。カニも柔らかめの砂泥が好きだ。捕食するには硬い砂地よりふわずぶのほうが、捕食者はゆっくり泳ぐし食い気も高いと思っている。
なので、ふわふわ、ズブズブに立ち込むと、より釣れる気が高まりワクワクするようになっている。
この経験がなかったら、多分ふわふわズブズブは回避するだろう。結構怖いし危ない。多摩川河口では攻めたからなぁ。いま、エーゲ海フラットで、ふわずぶに股間以上へそしたまで杖の助けを借りながら立っている。
実際、昨日立ち込んでいるルアーマン達は膝下から膝くらいまでしか立ち込んでいないしいずれも、硬い砂地ばかりでふわふわズブズブには誰も入らない。当然杖を持っている人は居ない。手軽に釣りを楽しむにはウェーダーでヒザ下で十分なのだろう。
ここに佇む日本人潮水毛鉤師だけが、唯一、杖をもって、膝より深いところに立ち込んでいるので、はたからみると、よーやるわ、あの覆面釣り師、てなことなのだろう。
ウェーダーはいて、杖突いて、覆面している変な潮水毛鉤師。
そもそも、海フライなんて誰もしていないので珍しいのは確か。
小舟で漁をしている漁師は珍しいからか、よく近づいてくれて、笑顔で何か話しかけてくる。勝手に応援してもらっていると理解している。言葉はちょっと遠いので聞き取れないが、日本人だけに、反射的に会釈してしまう。
漁師側も、あ、変な外人が変な釣りしてる、頑張ってねーということなのだろう。
雰囲気はよい。でも、河口の川筋のふわふわズブズブポイント小一時間攻めてみて不発。
そうこうしていると、シーバスらしいボイルが散発し始めた。
ワンキャストするたびに、8歩進む。
小中学校時、トランペット吹奏楽少年だった。
吹奏楽部ではマーチングもやっていたので、体が、8歩で5メートル歩くという方法を覚えている。5メーター8歩と呼ばれる。同一規格の下で吹奏楽少年少女たちが動くことにより、キレイな形をつくるのだ。
釣りでは、まぁ、正確でなくても良い。頭の中で、5m位、毎キャストごとに移動。
立ち込んでいると水深が膝下、膝上、太もも中央、股間、位でフライラインやストリップの扱いが変わるのだけど、ボイルに引き寄せられ、膝下の水深のフラットにきてしまった。
ハワイやクリスマス島でボーンを狙うシャローフラット。
タイプIIIだと釣り辛い。フローティングに替えたほうがやり易いなどと、考えていると。
ぷるぷる。
ハゼ?
チュプラの子供、インチェリダキだ。手のひらに収まるちびちゃん。
とりあえず一匹釣れたのでほっとするも、やはりサイズが物足りない。
うーん、ヒザ下なのでフローティングラインに付け替えたい。けれど、時合が始まったのでシステムを替える時間が惜しい。
前回釣行の3日目も、シーバスがボコって、ブルーフィッシュが走ってきたときもこうだった。
仕方ない、タイプIIIでフライ着水と同時に引っ張るしか無い。
昨日全く時合がなかったのと見合いか、今日は時合が続いている。
すると、この浅瀬で、バタバタと手のひら以下小物ヘダイが都合5匹きた。
ボイルに引っ張られないと、敬遠していた膝下水深の浅瀬。魚に釣りを教えられた。釣り味を優先して、膝上にこだわっていたことを反省。
この時点でホテルにおいてきた妻と約束していた1時間半の釣り時間を超えてしまったが、時合が続いているので、申し訳なく思いつつキャストを続けていると、
グイッ。
キビレやヘダイの硬いあたりではなく、口の柔らかい魚がクラウザーを咥えたよう。
なにかきた!
これまでの手のひらヘダイより、少し重い。
なんだろう。
少し重いけど、ファイトの抵抗が少ない。
魚が見えた、あ!!
Levrekだ!ヨーロッパスズキ来た!

釣り味はこの夏のホウボウのように味気なかったけど、内容はドラマチック。初物、かつ狙っていた魚が来てくれた。
サイズは28cm位だけど、力が抜けた。遂にやった。
エーゲ海フラットに立ち尽くした。天を仰ぐ。
そして、スヌースを口に咥えた。
頭がくらくらする、ヨーロッパスズキをやっつけた喜びと共に酔った。
ホテルに帰り、大急ぎで帰路につく。また、700キロの長距離ドライブだ。明日子供を幼稚園につれて行かなきゃならんのだ。夜半までに帰宅せねば。
付き合ってくれた妻に感謝しまくる。
おしまい。
RX100M5A, Photomatix Pro, Topaz Studio
HDR from 3 images, hand held
ナマジです ごぶさたです
やりましたね!おめでとうございます。
エーゲ海フラットの話、ワクワクしながら読ませてもらいました。
ハマさんがハマさんの釣るべき魚を釣った!という感じがしてとても良いです。
世界中の秘境にも釣り人が手を付けている昨今、様々な釣りが紹介されていますが、エーゲ海フラットの釣りは初めて目にしました。素晴らしい釣り!
ナマジさん!ごぶさたしてます。コメントありがとうございます。
普段は、サラッと釣りのことだけ書くところを、なまじさんのスタイルを真似して全部入りにしてみたところなんです。原稿書きながら、なまじさんのことを思い出していました。目指している方からコメントいただけてめちゃ嬉しいし、隠れミッションコンプリートな気分です。本当にありがとうございます!はま